ネットワークの形成による広域等課題対応支援事業

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No.6 博物館を中心とした広域連携に基づく和歌山移民史の総合研究発信事業

No.6 博物館を中心とした広域連携に基づく和歌山移民史の総合研究発信事業)

実行委員会

和歌山移民研究を軸とした国際交流事業実行委員会

中核館

和歌山県立近代美術館

事業目的

和歌山県は海外への移民を多く輩出した「移民県」であるが、「移民」というテーマの特性上、移民を送り出した側だけでなく、移民を受け入れた側から見た歴史の語りをも知り、共有することが欠かせない。よって県内諸機関が行ってきた移民史研究を集約し、単館ではなく広域的な取り組みとして国際的に発信すること、また海外の博物館との情報共有を行い、それを継続できる関係と場づくりを行う。具体的な事業を通じて、県内博物館施設・関連機関はネットワークの基盤を固め、近代移民という事象を和歌山県の特徴ある文化と歴史として総合的に情報発信することを目指す。

事業概要

本事業は県内に残された資料と移民先に所在する資料の双方を対象とした。所蔵資料の特性上、現時点での「移民先」は米国を中心とし、収蔵品のデジタル化と調査を通じて新たな資料の発掘にも取り組む。県の事業として2023年10月に実施する第2回和歌山県人会世界大会にも関連させ、本事業での研究の一端を、各館の展示においても発信する。一方、研究範囲とネットワークを米国外に拡大することにも努めつつ、海外の博物館との連携を通じて、和歌山の博物館における研究を国際連携の軌道に乗せる。あわせて本研究は郷土史の主要な一部であり、学校連携によって幅広い視点での博物館研究・教育を実現する。

実施項目・実施体系

1.県内所在北米移民資料の調査およびアーカイブ化作業
(1) 北米移民研究と資料のデジタル発信
(2) 紀の川市移民資料の目録作成およびデジタル化
(3) ヘンリー杉本旧蔵資料のデジタルアーカイブ化
(4) 和歌山県立近代美術館所蔵移民画家資料の整理

2.学校連携に基づく和歌山移民教育の実践と教材製作
(1) 学校教員による調査と研究
(2) ヘンリー杉本学習パンフレットの製作

3.海外所在資料の調査とアーカイブ化作業
(1) 「ターミナル・アイランダーズの会」イメージアーカイブ化
(2) 和歌山ゆかりの日系美術作家に関する調査
(3) カナダBC州所在資料デジタルアーカイブ化への取り組み

4.国際発信事業
(1) 国際シンポジウムの実施
(2) ウェブサイト「移民と美術」における情報発信

実施後の成果・効果等

今回の事業実施を通じて、和歌山県内の移民研究の輪がさらに広がり、強まった。こうした館種の違いを越えた連携体制は他府県のモデルとなるはずで、実際に各地方から問い合わせを受けている。また各館が本事業の成果を活かしつつ、展示公開へと繋げられたことも大きな成果であった。それによって県内外の一般利用者に対して、和歌山の特色ある歴史とその研究をアピールすることになったと考える。
各事業を通じては、資料撮影とデジタル公開という、現在の博物館に求められる条件を、一部ではあるが県が主導するデータベースに連携させて、市町村館へ展開できる体制を整えた。それをテーマによって繋ぎ、別のサイトでも公開する方策などは、博物館施設データベースの応用展開例になると考える。
ウェブサイトへのアクセス数は、展示やシンポジウムの広報を通じて、海外からも増えた。このことからも、バイリンガル(以上)での発信を継続する必要性は明らかであり、翻訳業務の体制をどのように整えていくかは課題としてある。また「移民と美術」ウェブサイトで発信し、効果測定をすることを予定していたが、今回はそれが叶わず、効果測定の時間も不足してしまったことは反省点である。しかし今後、ユーザーの利用促進を図り、その数値は記録していく。
教育事業への展開は大きく進歩を見た。教科の枠を超え、さらには一部、県外からの参加も得た歴史科教員らの研究会は、今後も和歌山県立近代美術館との連携を継続していく予定である。教員の現地研修は、授業実施への意欲を高め、より説得力のある指導へと結実しており、生徒たちの学習にとってプラスの効果がある。またオンライン授業は生徒たちに大きな刺激を与え、学校教育と博物館教育の違い、さらには広い社会への目線をもたらしたことを、アンケートの回答が示していた。
最後に補足だが、今回の事業を通じて、和歌山県立近代美術館と全米日系人博物館は、より継続的な連携体制を構築する計画がある。それは本事業の明確な成果であり、「国際ネットワークの組織的構築」という事業区分の目標達成の最大のものとなるはずである。

事業実績(PDF)

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