地域課題対応支援事業

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No.21 学校とミュージアムの共創~平和教育と鑑賞プログラムの開発~

No.21 学校とミュージアムの共創~平和教育と鑑賞プログラムの開発~)

実行委員会

学校と共創する美術で学ぶ平和教育実行委員会

中核館

長崎県美術館

事業目的

本事業の目的は、長崎県美術館の収蔵作品をもとに、美術作品の鑑賞を通して平和について学ぶ、新しい「平和教育プログラム」を、長崎県美術館と長崎県内の学校が共創し、長崎県の平和教育の推進に寄与するとともに、離島を含む遠隔地に在住する者や来館が困難な子どもたちを含む児童生徒に、長崎県美術館の教育プログラムを届け、芸術的な感性を有し、多様な価値観を持ち、自らのことばで発信できる人材を育成することである。その達成のために学校と「美術館を活用した平和教育プログラム」を共創し、さらにその教材や授業案を提供するプラットフォームをネット上に構築し、普及と活用を図る。

事業概要

本事業は以下の三つから構成される。
〇「美術で学ぶ平和教育プログラム」の拡充と普及
平和教育プログラムを学校現場と共創する。令和4年度のInnovate MUSEUM事業で作成・活用した小中学校向け授業案を改訂し、長崎県内で普及すべくさまざまな校種の実施校を募る。高等学校でも実施し、実践事例の拡充を図る。
〇デジタル教材開発とプラットフォーム構築
先端技術を用い、作品鑑賞に資する教材を長崎大学の情報科学を専攻する研究室と共同で開発する。高精細・3D画像等を用いたデジタル教材は学校現場と協力して作成した授業案とともにプラットフォームP(Peace Education through Art Content Explorer、以下PEACE)を構築し、ネット上で公開する。
〇離島部での「平和教育プログラム」と芸術鑑賞体験の推進
教員向けレクチャーや学校と美術館を結んだ遠隔授業を実施する。

実施項目・実施体系

1.「美術で学ぶ平和教育プログラム」の拡充と普及
①授業案活用のための教員向けレクチャーの実施
②授業案を活用した鑑賞プログラムの実施
2.デジタル教材開発とプラットフォーム構築
①デジタル教材開発検討委員会の実施と製作
②作成したデジタル教材の活用
③デジタル教材の格納・環境整備
④収蔵作品や作家に関連する情報収集のための現地視察と調査
3.成果報告
①授業実践校の事例公開
②記録集作成・発信

実施後の成果・効果等

本事業では、昨年度作成した小中学校の授業案とデジタル鑑賞ツールを活用した実践事例を普及させるため、教員向けレクチャーを長崎県美術館と離島部である五島市にて開催した。参加した教員からは「平和学習において直接的な恐ろしい絵を見て学ぶことも大事だが池野の作品を題材に用いると第一印象が怖いではなくじっくり考えることができそう。」(幼稚園教諭)「全員で同じ作品をみることにより多様性を知ることができる。」「5年生の平和教育で原爆資料館に行く前に、事前学習として鑑賞授業を行うとにより学習が深まる。」(小学校教諭)「鑑賞教育は言語化することが手段のひとつにあり、国語科との親和性が高いと思う反面、どのような教材でアプローチしていいか悩むところである。」(高等学校教諭)といった幅広い校種の先生から率直な感想があげられた。先生方には授業案を紹介し、実際に鑑賞プログラムを体験してもらったことで、普段実践されている平和学習に鑑賞教育を取り込むことの有用性を感じてもらう機会となった。また教員向けレクチャーをきっかけに離島部での遠隔授業が実現し、併せて小中学校だけでなく幼保、高等学校、大学とさらに校種を拡大して授業案を活用した鑑賞プログラムを実施できたことは大きな成果である。最後に実際にプログラムを実践したこども園の教員と高等学校の教員、有識者を含めて座談会をひらき、活用事例を報告・公開しあう場とした。そこでは、デジタル鑑賞ツールの利便性やそこで得られた学習効果、実作品でしか味わえない鑑賞効果などそれぞれの立場から建設的な意見が出された。高精細画像を使用したクラスとそうでないクラスとでは、明らかに生徒の反応やその後の学習の深まりが違ったという貴重な意見もあがった。
 デジタル教材開発「PEACE」には、長崎県美術館所蔵作家5組をピックアップし、所蔵作品を活用した授業案、作品の高精細画像、活用事例等を集約した。これまで取り組んだ鑑賞プログラムをもとに平和学習に連関する作家・作品の特性や時代背景、作品ジャンルなどを鑑み選択している。5作品ごとに授業案と作品の高精細画像が紐づいており、サンプルページを閲覧しながら自校の校種や発達段階、教科や学習のねらいに応じて活用方法を検討、申込ができるように掲載した。鑑賞・授業用ページでは作品画像に拡大機能をつけ、ブラウザから直接アクセスでき、児童生徒等の学習者が手元の端末で操作しながら鑑賞できるようにした。今年度は、絵画、彫刻、写真のジャンルを格納できたため、今後は版画作品の追加が望まれる。原爆投下後の長崎と被爆者の実相、キリシタン弾圧、第二次世界大戦中におけるユダヤ人迫害といった平和について思考するための幅広い要素が主題に含まれ、広義の平和学習を行うための教材として厚みが増した。プログラムや授業案のバリエーション拡大が期待できる。今後、広く学校現場で活用され、利用者からの声をもとにより使いやすいものへとブラッシュアップしたい。

事業実績(PDF)

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