地域課題対応支援事業

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No.19 高齢者をつなぐ美術館と医療・福祉施設、行政機関、公民館、他の博物館との連携事業

No.19 高齢者をつなぐ美術館と医療・福祉施設、行政機関、公民館、他の博物館との連携事業)

実行委員会

学校法人中村産業学園

中核館

九州産業大学美術館

事業目的

本事業は、様々な連携を通じて地域資源を活かし地域の人々の健康寿命の増進につなげることを目的とし、次の3つの視点で事業を展開する。
1.地域の医療・福祉施設、行政機関等と連携して博物館の社会的処方の場としての機能の強化を図る。高齢者や介護従事者との関係を築き、健康・幸福感、生活の質への貢献、ひいては社会的包摂への寄与につなげる。
2.近隣の公民館と連携した美術鑑賞やコミュニケーションの機会を創出し、美術館に訪れることができない高齢者の、大学美術館の取り組みへの理解、社会的処方の場としての美術館機能の強化を図る。
3.他の博物館と連携した地域の高齢者に多様な博物館体験を提供し、文化を通じた住民同士の出会いの場をつくるとともに、博物館の魅力向上を図る。         
 博物館法の一部改正により、これからの博物館の役割・機能として、地域の多様な主体との連携・協力により、社会や地域の課題に向き合い、解決に取り組むことも求められる。本事業がそのモデルとなることを目指す。

事業概要

1.地域の医療・福祉施設、行政機関との連携事業
(1)認知症患者とその介護者を対象とした鑑賞プログラムの開発と実践
(2)プログラム開発にあたっての先進事例の調査
(3)博物館と医療・福祉機関の連携に係る研究会の開催
2.地域の公民館との連携事業
(1)遠方への外出が困難な地域住民を主な対象とした、美術館と公民館を結んでのオンライン鑑賞会の開催
3.他の博物館との連携事業
(1)高齢者を主な対象とした多様な博物館体験の機会を創出するアートバスツアー、ワークショップの開催

実施項目・実施体系

1.地域の医療・福祉施設、行政機関との連携事業
(1)認知症患者とその介護者を対象とした鑑賞プログラムの開発と実践
①鑑賞プログラムの作成、検討(1回目)
②鑑賞プログラムの実践(1回目)
③実践記録の分析(1回目)
④鑑賞プログラムの作成、検討(2回目)
➄鑑賞プログラムの実践(2回目)
⑥実践記録の分析(2回目)
⑦鑑賞プログラムの作成、検討(3回目)
⑧鑑賞プログラムの実践(3回目)
⑨実践記録の分析(3回目)
⑩鑑賞プログラムの作成、検討(4回目)
⑪鑑賞プログラムの実践(4回目)
⑫実践記録の分析(4回目)
⑬報告書の作成・発信
(2)プログラム開発にあたっての先進事例の調査
①先進事例の調査
②報告書の作成・発信
(3)博物館と医療・福祉の連携に係る研究会の開催
①研究会準備、広報
②研究会の開催
③報告書の作成・発信
2.地域の公民館との連携事業
(1)美術館と公民館を結んでのオンライン鑑賞会の開催
①公民館との打合せ
②広報物の作成・配布
③オンライン鑑賞会の開催
④公民館との打合せ
⑤広報物の作成・配布
⑥オンライン鑑賞会の開催
⑦報告書の作成・発信
3.他の博物館との連携事業
(1)高齢者を主な対象としたアートバスツアー、ワークショップの開催
①アートバスツアー、ワークショップの検討会議
②広報物の作成・発信
③アートバスツアー、ワークショップの開催
④報告書の作成・発信

実施後の成果・効果等

本事業は、本学美術館(以下「本館」という。)様々な連携を通じて地域資源を活かし地域の人々の健康寿命の増進につなげることを目的とし、3つの視点で事業を展開した。各視点での成果・効果は次の通りである。
視点① 本館と地域の医療・福祉施設、行政機関等との連携による、博物館の社会的処方の場としての機能の強化。
(1)近隣の病院と連携し、入院中の患者(軽度の認知症患者を含む)を対象とした鑑賞プログラムを4回実施。
成果・効果 参加者のニーズを考慮し、美術館の所蔵品を活用した再現性の高い「所蔵品活用型」プログラムと、開催中の展覧会を展示会場から紹介する「展覧会案内型」プログラムの2種類の鑑賞プログラムを開発した。参加者の事前、事後の心理的な変化について、フェイススケールとPOMS2による評価を行った。フェイススケールおよびPOMS2の結果から、緊張や不安、疲労感や無気力が軽減され、ポジティブな感情へ変化したと考えられる。
(2)博物館処方箋の取り組みを進めている国立台湾博物館と台北市連動病院を訪ね、プログラムの様子を視察した。
成果・効果 関係者から詳しく話を聴くことで、本事業の連携のあり方について評価、検証し、改善する契機となった。先進事例を視察することにより、それぞれの機関の役割の明確化と連携のあり方、プログラム全体の構成等、改善事項について協議する場を設けることができた。
(3)地域の医療、福祉、博物館関係者と研究会の実施
成果・効果 昨年度実施した研究会での学びを生かした本館の鑑賞プログラムの実践事例を発表した。さらに海外の博物館と医療の連携に関する先進事例の発表を聞く機会とし、本館の事業に対する関係機関の理解や、連携に関する関心を高めることにつながった。今後、関係機関が、博物館を社会的処方の場としての機能に関心を持つことで、連携の促進、博物館の社会包摂(孤立・孤独対策を含む。)への寄与に結び付くことが期待される。 
視点② 本館と近隣の公民館との連携による、地域の高齢者へのアプローチ。
(1)本館が近隣の公民館とZoomでつなぎ、ライブ配信による「展覧会案内型」の鑑賞プログラムを2回実施。
成果・効果 公民館に作品の実物を持ち込み、より充実した鑑賞体験を提供した。自宅からパソコンで参加する方の感想や質問も共有した。美術館学芸員や、参加者同士の会話もあり、コミュニケーションを生む機会ともなった。また、参加者の中には、昨年度から連続して来てくださっている方もいた。フェイススケールによる評価では2回とも気持ちが明るい方に変化していることが分かった。美術館に訪れることが困難な高齢者を想定したこの取り組みは、社会的処方の場としての機能強化につながるとともに、社会包摂(孤立・孤独対策を含む。)を促進する手立ての一つとしての可能性を示した。
視点③ 本館と他の博物館との連携による、多様な博物館体験の提供。
(1)福岡市美術館との連携で大学周辺の高齢者を対象としたアートバスツアーを実施。香りをテーマとした鑑賞プログラム。福岡市美術館の学芸員による展示案内で、作品ゆかりの香りを楽しみながら鑑賞。また、大分香りの博物館の学芸員によるワークショップで、参加者が香原料を調合し、匂い袋と文香を制作。
成果・効果 フェイススケールと自由筆記によるアンケート等の結果から、参加者のQOLの向上、ならびに博物館の魅力の向上につながったことがうかがえる。周辺地域をまわるバスを出したことで、移動のハードルを下げることができた。足が悪くあまり外に出たがらないという高齢の女性が、プログラムの内容に魅力を感じ参加されるなど、高齢者が博物館に出かける機会をつくるとともに、文化を通じた住民同士の出会いの場を提供することができた。

事業実績(PDF)

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