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No.17 学校と美術館の連携事業 2023 学校教育とミュージャムラーニングの接続から新たなミュージアムの価値の創造へ

No.17 学校と美術館の連携事業 2023 学校教育とミュージャムラーニングの接続から新たなミュージアムの価値の創造へ)

実行委員会

岡山県立美術館 学校と美術館の連携委員会

中核館

岡山県立美術館

事業目的

2010年~2022年度までの事業は、すべての子どもたちが、文化的で豊かであることを目指す学校と当館の共働プログラムで、双方の連携を図りながら、ともに地域や社会に開かれた姿を目指す事業として取り組んできた。12年間の事業を受けて、次年度以降、学校との連携を軸に、新たに岡山カルチャーゾーン内の5つのミュージアムとも連携を図り、「あらゆる利用者」に目を向け、学校教育とミュージアムラーニングのゆるやかな接続をデザインしながら、ミュージャムが多様な人々にとって「第3の場所」となることを目的に事業に取り組む。 また、本事業に取り組むことをとおして、「利用者」について考え、今まで取り組みができていなかった「学校や地域社会に接点を持ちにくい、あるいは、生きづらさを抱えている人々」をサポートしている機関との連携の在り方を構築する。

事業概要

本事業は、学校との連携、カルチャーゾーン・ミュージアム連携、福祉等関連機関連携の3つの連携を行いながら、「第3の場所」としてのミュージアムの存在意義・価値を見出すため、以下の3つの事業を今年度は実施する。
1.自館のラーニング・プログラムを、UM(ユニバーサル・ミュージアム)と福祉の視点から「誰のために/何のために/誰と共に」を検討し、実験的に企画・実施する。なお、2019年度から開催している「みんなの参観日」とも有機的に連動させながら企画・実施する(「2023年度 第5回 みんなの参観日」は、3月中旬完了事業のため、本申請書には詳細を記載しない)。
2.カルチャーゾーン・ミュージアムの連携をとおして、ミュージアムラーニングについて検討し、「スクール・プログラム」、並びに「ソーシャル・ストーリー」の検討、企画・実施、作成を行う。あわせて、カルチャーゾーン・ミュージアム5館のミュージアム資源を活かしたon-lineミュージアムラーニング素材の作成(R6年度以降)を視野に入れながら連携事業に取り組む。
3.上記、1・2の事業を行いながら、学校×ミュージアム×福祉等の連携の有り様を検討する。

実施項目・実施体系

1.環境基盤整備方針の検討
 (1)連携委員会
2.学校教育とミュージアムラーニングの接続(UM、福祉の視点からのアプローチ)
 (1)企画・検討会
 (2)プログラムの実施
 (3)アンケート・インタビュー&関係諸機関との連携の在り方を模索
3.カルチャーゾーン・ミュージアムラーニング・連携
 (1)企画・検討会
 (2)ミュージアムの使い方「あいうえお」の作成
    *「ソーシャル・ストーリー」から名称を変更
 (3)関係諸機関との連携の在り方を模索

実施後の成果・効果等

1.環境基盤整備
 事業目的を達成するため、小教研図工部会・中教研美術部会・大学との連携に加え、さらに幅広い機関との連盟基盤を整えていく必要性が出てきた。これは、以下の2,3とも大きくかかわる。
2.学校教育とミュージアムラーニングの接続(UM、福祉の視点からのアプローチ)
 *UMプログラム:視覚障害当事者と作家がファシリテーターを務め参加者と双方向性
のあるプログラムを実施。障害の有無に関わらず参加者があった。またその中で、車いすユーザーが参加をされ、車いすユーザーの視点でのプログラムに今後発展できる可能性が生まれた。
 *ひきこもり支援×ミュージアムプログラム:関係諸機関(ひきこもり当事者含む)
や、アドバイザー(2人)を招聘することで、当事者の立場にたったプログラムを
実施することができた。実施後の当事者の感想等は、次年度以降につながる可能性
を感じている。さらに、関係諸機関の新しい開拓、学校教育機関(不登校支援)とのつながりも生まれた。(詳細は、「事業実績」をご参照ください)
 *やさしい日本語×ミュージアムプログラム:関係諸機関と連携することでプログラ
ムを実施することができた。参加者の中から当館の新規ボランティアに募集し次年度から活動を始める方も生まれた。関係諸機関との関係性が今後大きな課題となると感じている。
3.カルチャーゾーン・ミュージアムラーニング連携
 5つの館の特性、並びに利用者(潜在的利用者含む)の特性を洗い出すことで「博物館の「新しい定義」(ICOM)等を共有し、「ミュージアムの視点」からでなく「利用者の視点」から話し合うことができるようになった。
 そのような視点を持つことで、県外の他館での先行実践者や、医療従事者、学校関係者等様々な立場の人と共に新しい関係性を構築していく可能性が生まれた。そうした中で、「ソーシャル・ストーリー」という名称を使用することから「ミュージアムの使い方<あいうえお>」に名称を変更する案が生まれてきた。神経発達症の方、またその当事者に関わる方々向けに作成した当作成物は、はじめてミュージアムを訪れる方等にも汎用性のある形で利用していただけるポテンシャルをも持っていることがみえてきた。
 特に今年度取り組んだ、やさしい日本語×ミュージアム、ひきこもり支援×ミュージアムに参加した参加者や関係諸機関からの利用の可能性や問い合わせをいただいている。
 一方で、神経発達症の方々は、非常に多様な特性を持っていることから、さらに別のメディアでの作成が求められていることも分かった(複数のメディアで作成することが重要であるとの助言をいただいている)。次年度以降、当事者そのものに対象を絞った動画、まんが等のメディアを使った「あいうえお」の作成を試みる。同時に、本年度作成物が、どのように利用されているのかを追跡調査することも重要であるとのご指摘もいただいている。

 「2023年度 学校教育とミュージアムラーニングの接続からあらたなミュージアムの価値の創造へ」という大きな事業に取り組んだことにより、当館をはじめ多くのミュージアムがなかなか取組めていなったマイノリティ、つまり、学校、地域や社会に生きづらさを抱えている人々のことを想像する力と、その人々に関わっている多様な関係諸機関と顔と顔が見える関係性をつくることが重要であると考える。今年度事業に取り組んだことにより、「夜間中学校をつくる会」、「My Place(岡山県総合教育センター)」、「岡山県ひきこもり地域支援センターとそのセンターとつながる各地域の社会福祉協議会」、「おかやま地域若者サポートステーション」、「多機能型事業所SMILEクローバー」、「放課後等デイサービス」」、「子育ての孤立を防ぐ_Community Support Rejoice」等と繋がりが生まれた。これらの関係諸機関とどのようなフレームを構築して、その中でミュージアムができることにどのような可能性があるのか双方向で検討していくことが、今後大きな課題であると考えている。
 一方で、ミュージアムという組織の中では、利用者視点を持ちにくい職員がまだまだ多いという現状もあらたに浮かび上がってきている。インクルージョンを進めようとする際の3つの障害として指摘される「上司・お金・変わることへの恐れ」は、どこの館にも存在していると考える。これを乗り越えるために、次に必要になるのは、「アウトプット」と同時に「アウトカム」という概念が、様々な事業評価の場面で用いられる必要があるのではないかと考える。

事業実績(PDF)

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