令和6年度 ネットワークの形成による広域等課題対応支援事業
No.5 能登半島地震被災文化財デジタルアーカイブ事業
                実行委員会
金沢大学資料館
中核館
金沢大学資料館
事業目的
令和6年能登半島地震で被災を受けた文化財を3Dモデルなどで記録し、デジタル・アーカイブ化することである。これらの情報を公開することにより、能登地方の貴重な文化資源を後世に伝えるとともに、DX技術を活用することで災害を受けても近隣の複数の博物館が連携することにより情報発信できる事例を提案する。
事業概要
 能登半島地震で被災を受けた重要な建築物の3Dモデルの作成について、大規模な神社建築などの複雑かつ大型の三次元測量は専門業者へ依頼する。三次元測量前の地元住民との折衝、学生ボランティアの誘導、また、復興状況にもよるが、小規模の歴史的建築物、石塔及び板碑などの石造物の三次元測量等は、昨年度のInnovate MUSEUM事業で研修を受講した連携館の学芸員を含む職員等が実施する。
 収集された大量の歴史資料・自然史資料のリスト化は、多くの人員が必要であるため、金沢大学の授業で学生ボランティアを募集して事業の一環としての作業を実施する。リスト化のため、過去に被災地で文化財の復興に関係した教員等や文化財レスキューの指導者に被災文化財の取扱いについて講義を依頼する。
 デジタル・アーカイブの公開は、昨年度のInnovate MUSEUM事業で作成したプラットフォームの石川デジタルミュージアムネットワーク(IDMN)(https://idmn.w3.kanazawa-u.ac.jp)上で行う。文化財の持ち主や地域の方々から許諾が得られ次第、順次このサイト内で公開する。
 上述の取組に加え、地域の一般の方、学生ボランティアや文化財保護関係者対象とし、文化財に親しみ、その保護の重要性に関する理解を深めることを目的とし、文化財保護のDX化の現状等について、連携館と協力してワークショップを実施する。
実施項目・実施体系
1. 過去の被災地と連携した講演活動
(1)被災文化財対応の人材育成事業
①能登連携館における研修 ②学生ボランティアへの講義
2. デジタル・アーカイブ作成活動
(1)被災した歴史的建築物の3Dモデル作成
(2)歴史資料・自然史資料の記録作成
①歴史資料・自然史資料洗浄 ②歴史資料・自然史資料のリスト作成
(3)デジタル・アーカイブ作成
①デジタル・アーカイブの編集 ②デジタル・アーカイブの多言語化
3. 事業報告書作成活動
(1)報告書の作成
実施後の成果・効果等
 過去の被災地の文化財保護関係者や被災した連携館を運営する七尾市教育委員会から講師を招き、「被災文化財救援フォーラム」を金沢市と七尾市で実施した(9月、12月)。三次元測量の必要性等、被災文化財救援に向け、理解を深める貴重な機会となった。学生ボランティアに対する講義は中核館である金沢大学資料館の館長が担当する大学の授業カリキュラム内で実施した。
 デジタル・アーカイブ作成活動は、4期にわたる三次元測量作業(全4期(7月~12月)、17件)、測量前及び被災した資料のアーカイブ化前に学生のフィールドワークによる清掃作業及び資料整理等を実施した(7月~1月、全8回)。事業の後半(11月~2月)は、IDMNのWebサイトに、「能登半島地震被災文化財」ページを新設するとともに新たに各連携館の103点の資料を公開する準備を整え内容を充実させた。また、連携館3館を追加したIDMNチラシを刷新した。 
 本事業の活動の詳細を「事業報告書」にまとめた(2月)。事業を通して、能登地方の貴重な文化資源を後世に残すことができた。また、近隣の博物館が連携することによって、被災地だけでは対応し難い文化財救援活動及びIDMNの充実による情報発信のDX化を進めることができた。