令和6年度 地域課題対応支援事業
No.5 「古代オリエント」で集まり、つながり、広がる!ミュージアムプロジェクト
実行委員会
古代オリエントをたのしむ実行委員会
中核館
公益財団法人 古代オリエント博物館
事業目的
本事業の目的は、1:多様な来館者に向けて文化を発信すること、2:あらゆる人々(年齢・性別・国籍・身体的個人差など)がミュージアムで学習を実践できる場を創出すること、3: イベントや広報を通じて1と2を広く地域(豊島区民、在学・在勤者、ミュージアム)に普及し、地域における文化の活性化や発展に寄与すること、にある。
事業概要
目的達成にあたって、本事業では2つの活動を設定した。なお各活動は独立したものではなく補完しあっている。
【1.ユニバーサルミュージアムのさらなる充実】
本活動では、社会包摂の視点に立ち、(1)視覚障害者、聴覚障害者が様々な人々とミュージアムで学習活動を実践できる場の形成、(2)多言語を取り入れた誰もが利用しやすい環境の整備に力を入れる。具体的には、視覚障害者と晴眼者が共に学べる展示解説イベントやハンズオン展覧会を開催する。手話を第一言語とする聴覚障害者の学習機会を多く設けるため、手話解説を充実させる。併せて補助教材(ハンズオン教材、音声解説など)の制作や、設備(歩行補助テープ)導入を積極的に進める。(2)では誰もが安心してミュージアムが利用できるよう、アクセシビリティサイトやコミュニケーション支援ツール(コミュニケーションボードなど)を制作する。これは日本語だけでなく従来の英中韓および「やさしい日本語」を用いて行う。(1)と(2)取り組みにあたっては、サンシャインシティCXチームや豊島区の関連機関・団体と連携し、当事者へのヒアリングおよびアンケート調査を行いながらミュージアムの社会包摂的機能を強化する。
【2.豊島区連携事業】
豊島区内ミュージアム連携事業として、豊島区文化デザイン課を中心とし区内のミュージアムと連携し、回遊イベントや、ミュージアムが一堂に介して展示やワークショップを行う「ミュージアムフェア(仮)」を実施する。新たな取り組みとなる「ミュージアムフェア(仮)」は、様々な理由(身体的、経済的など)で複数のミュージアム訪問が困難な人々にも、各館を認知・利用してもらう機会となることを目指す。運営スタッフとしては、地元住民や学生などにスタッフとして積極的に参加しもらう。また、ミュージアムや図書館ならびに中核館が所在するサンシャインシティ、企業などと連携し、豊島区民、在勤・在学者に向けた講座やワークショップを実施する。なかでも、サンシャインシティは人が多く集まる商業施設や水族館などのアミューズメント施設を有するため、同社のコミュニケーション部やまちづくり推進課と連携しながら、幅広い世代にアピールできるイベントや地域住民と共に企画・運営するワークショップの開催、効果的なSNSやプレスリリースなどの広報宣伝活動を展開していく。
実施項目・実施体系
【1.ユニバーサルミュージアムのさらなる充実】
(1)視覚障害者と晴眼者が共に学べるプログラムおよび展示の実践
①触る教材の制作
②触る展示解説ツアーの実施
③体験展示を中心とした展覧会の開催、
④ハンズオン展示調査
(2)手話による展示解説の充実
①手話による展示解説動画の制作:
(3)アクセシビリティの強化
①アクセシビリティ情報のウェブ発信
②コミュニケーションボード制作
(4) 多言語によるユニバーサルミュージアムの取り組み発信
①英中韓による展覧会情報発信(7月、9月)
②日英+やさしい日本語によるワークシート作成(8月〜)
【2.豊島区連携事業】
(1)豊島区内ミュージアム連携イベントの開催
①文化施設回遊イベント(ミュージアムスタンプラリー)打合せ
②イベント告知、広報・イベント関連ワークシート作成・配布
③文化施設回遊イベント(ミュージアムスタンプラリー)開催
④文化施設回遊教材(ミュージアムダイアリー)制作
(2)豊島区在学・在勤・在住者に向けた教育普及活動の実践
①子供イベント実施
②豊島区在勤者向けイベント実施、
③池袋サンシャインシティ内イベント実施
(3) 豊島区コミュニティへの情報発信
①豊島区小中学校生への広報
②豊島区民、在勤者向けポスター展示、
③サンシャインシティアプリを活用した情報発信
実施後の成果・効果等
【1.ユニバーサルミュージアムのさらなる充実】
ハンズオン展示解説およびハンズオン展覧会開催、日英表記ワークシートの配布や多言語ウェブ情報発信、手話による展示解説動画の公開など、視覚障害者、聴覚障害者、非日本語話者へのアクセシビリティを充実させたことで、多様な人々(年齢・性別・国籍・身体的個人差など)の博物館利用が見られるようになった。特に障害者とインターナショナルスクール(以下インター)の増加が顕著であることから(障害者利用:R5年490名→R6年732名、インター:R5年1件→R6年9件)、障害者および非日本語話者への取り組みは、着実に成果を上げていると言える。また、アクセシビリティの向上に向けた取り組みにおいては、サンシャインシティアクセシビリティ推進チームと豊島区障害福祉課の協力を得て、新しい福祉製品(UDトーク、ココテープなど※詳細は後述)の試導入、コミュニケーションボード作成、アクセシビリティ情報発信を進めた。中核館は小規模館であるが、小規模館におけるユニバーサルミュージアム事業の促進において、商業施設-行政-ミュージアムの連携モデルの構築が有効な手段の一つとして示すことができた。
【2.豊島区連携事業】
豊島区内ミュージアム連携では、公私の区内文化施設を回遊するイベントを開催した。参加施設は14館と、初回開催時(2023年6館)からおよそ2.3倍の数に増えた。各施設が自館の利用者や施設近辺住民への宣伝・普及に努めたことで、豊島区民、在勤・在学者の参加が広域に渡って見受けられるようになった。中核館においては、豊島区民、在勤・在学者を対象または優先に受け入れた展示解説やワークショップを通じて、連携事業の情報発信を行った。特に子供を対象とした事業では、長年の取り組みの中で育成された子供リピーターが、上記ミュージアム連携事業にも参加するといった相乗成果が見られた。これまで区民利用が少なかった施設(例:立教学院展示館)からも、「区民、特に子供の来館が増えた」という報告がなされており、本事業によって、地域の幅広い世代の人々が同区の個性豊かなミュージアムを知り、ミュージアムにかかわる機会を創出することができた。
事業を進める中で、参加施設からは豊島区内ミュージアム連携組織の立ち上げを希望する声も挙がっており、豊島区のミュージアム同士のつながりは確実に強化できている。また、豊島区のミュージアムの中には、1.ユニバーサルミュージアム事業やサンシャインシティアクセシビリティ推進チームの取り組みに関心を寄せる施設もあり、今後は豊島区全体でユニバーサルミュージアムの理解を深め、実現を目指すという中期的な目標についても話し合うことができた。この発展は、1.と2.を総合的に取り組んだ本事業だからこそ得ることができた成果である。
事業実績(PDF)