令和6年度 地域課題対応支援事業
No.13 「みんなでつくる、ふれる、つながる文化財の複製」事業
実行委員会
和歌山県立博物館施設活性化事業実行委員会
中核館
和歌山県立博物館
事業目的
課題の克服には、文化財の複製がもつ利点を発揮して、文化財の保存が広域的・汎用的に地域の活性化に資するという実感を重ねていくことが求められる。本事業では独立行政法人国立文化財機構文化財活用センターの「ぶんかつアウトリーチプログラム」など国宝の複製を出張授業等で活用する手法を参考に、さらに当館の過去の取組実績を活かして、複製の製作過程の中にも地域のコミュニティとともに文化財を楽しむ場を創生することで、文化財複製活用の多様化を模索することを目的に据えた。
事業概要
本事業では、複製の造形・着色等・公開の3つのステップに地域の生徒・学生・住民が携わる場を設ける。複製の対象には、熊野速玉大社(和歌山県新宮市)所蔵の国宝神像4軀を選定し、より広範な価値の共有と効果実感の向上を図った。造形は和歌山県立和歌山工業高等学校と連携して3D複製技術を学ぶ生徒が主体となり、着色等では主に新宮市の小・中学生および住民が参加するワークショップを実施した。公開は完成した複製の奉納奉告祭および学芸員の解説会に地域住民の参加を募り、所蔵者の所在地における公開とともに、和歌山県立博物館での実物展示とあわせた事業紹介をおこなった。
実施項目・実施体系
1.複製の造形
①計測データの修正 ②造形(出力) ③造形物の仕上げ(接合,積層痕の除去,下地塗り)
2. 複製の着色
①着色ワークショップ開催準備 ②着色ワークショップ(3~4回) ③着色の仕上げ
3.複製の公開
①博物館での公開(継続中) ②複製の完成・奉納・解説および現地公開(継続中)
実施後の成果・効果等
本事業では、熊野速玉大社国宝神像4軀の実物大複製4体および彩色テスト用の2分の1サイズの複製4体の造形が完了した。このうち実物大1体とテスト用2体が完成に至っており、その他の複製は所蔵者との協働で引き続き製作を続けている。地域との連携では、特にワークショップの開催に当たり新宮市教育委員会の協力を得て、校長会での説明や小中学校教諭への営業を行い、当該地域の子どもたちの博物館利用実態を把握できた。ワークショップでは文化財修理等にも目を向け、地域住民自身が地域の文化財を誇り、協力して継承するものであることを伝えられたと感じる。
事業実績(PDF)