地域課題対応支援事業

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No.12 新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業

No.12 新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業)

実行委員会

新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業実行委員会

中核館

京都国立近代美術館

事業目的

本事業の目的は以下の3点とする。
【1】「運動」「軌跡」をテーマに抽象絵画を身体でたのしむ鑑賞プログラムの開発
 テーマ作品:長谷川三郎《蝶の軌跡》
【2】絵画の「輪郭」と「色彩」を、指先で学ぶ「さわる図」の制作と配布
 テーマ作品:ピエト・モンドリアン《コンポジション》、徳岡神泉《池》
【3】人材育成及びネットワーク形成

事業概要

本事業では、障害の有無に関わらずともに美術を鑑賞できる環境整備を目指した。とりわけ「平面作品」を視覚だけでなく触覚や対話等を用いて味わう鑑賞プログラムの開発はいまだ途上であることを踏まえ、京都国立近代美術館の所蔵作品を活用した実験的なプログラム開発とその成果公開を行った。
【1】「運動」「軌跡」をテーマに抽象絵画を身体でたのしむ鑑賞プログラムの開発
 チョウが飛ぶ軌跡やその運動という「目に見えないもの」をテーマとした抽象絵画である長谷川三郎《蝶の軌跡》を取り上げ、作家・視覚障害のある当事者と協働しながら、作品の世界を身体感覚で味わう鑑賞プログラムを開発する。10~12月にかけて一般に公開し、効果を検証する。
【2】絵画の「輪郭」と「色彩」を、指先から学ぶ「さわる図」の制作と配布
 絵画を構成する様々な要素について触れて学ぶ「さわる図」の可能性を模索する。ピエト・モンドリアン《コンポジション》と徳岡神泉《池》の「輪郭」と「色彩」を、磁力やエッジのきいた凹凸表現など複数の触覚的な刺激に変換した図を制作する。1,000部制作し、全国の盲学校やライトハウス等へ送付し活用を促す。
【3】人材育成及びネットワーク形成
 視覚だけに依らない鑑賞活動のさらなる充実化のため、美術館関係者が実践事例や課題意識を共有する場やツールを作る。

実施項目・実施体系

1「運動」「軌跡」をテーマに抽象絵画を身体でたのしむ鑑賞プログラムの開発
(1)プログラム検討会議
(2)プログラム調査
(3)プログラム成果公開
(4)一般向けワークショップ
2 絵画の「輪郭」と「色彩」を、指先から学ぶ「さわる図」の制作と配布
(1)さわる図 検討会議
(2)さわる図 事例調査
(3)さわる図 成果公開(制作と配布)
3 人材育成及びネットワーク形成
(1)研究会
(2)実行委員会
共通 報告書作成

実施後の成果・効果等

本事業では、作家、専門家、視覚障害のある当事者と連携しながら、「平面作品」を視覚だけでなく触覚や対話によって味わう、ユニバーサルな(誰もが楽しめる)鑑賞プログラムの研究と新規開発を行った。

 第一に、長谷川三郎という作家が描いた抽象絵画《蝶の軌跡》を視覚・触覚・対話・想像など多角的なアプローチで味わう鑑賞プログラムを、作家・視覚障害者と協働して開発した。14点の手で触れることができる鑑賞ツール、およびウェブコンテンツを制作した。さらに約3か月間、一般来場者が自由に体験・鑑賞できる形で公開し、2万人以上の来場があった(1(1)~(3))。平面作品の世界を、見える・見えないに関わらず味わう方法はいまだ発展途上であるが、ひとつの可能性を提示することができた。また京都府立盲学校の中学生5名を対象に鑑賞・制作ワークショップを行うことで、盲学校における美術教育の充実に貢献することができた。

 第二に、京都市立芸術大学、国立民族学博物館、京都府立盲学校と連携し、抽象的な絵画作品を指先から学ぶ「さわる図」(触察ツール)を開発・制作した。従来は絵画の輪郭やモチーフを凹凸のある印刷で表現することが一般的だが、今回は、色彩の違いを磁力の違いに変換し、磁石を用いて色合いの違いを感じ取るという全く新しい表現に挑戦した。2作品について各1000部制作し、全国の盲学校・ライトハウス・点字図書館・主要な美術館等へ配布することで、一人でも多くの視覚障害のある方が、さまざまな絵画表現に身近に親しむきっかけとすることができた。  第三に、視覚だけによらない美術鑑賞の全国的な発展・広がりと、関係者どうしのネットワーク形成を企図し、本事業を含め各地の美術館等での取り組みを紹介した冊子を作成し、PDFデータを公開した。

事業実績(PDF)

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