地域課題対応支援事業
年度絞り込み
事業区分で絞り込み
No.24 ABCモデルによる新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業
実行委員会
新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業実行委員会
中核館
京都国立近代美術館
事業目的
本事業の目的は次の2点とする。
1点目は、ユニバーサルな(だれもが楽しめる)作品鑑賞プログラムの開発のため、視覚障害のある当事者を「企画者・発信者」として協働関係を築き、彼らの感性や専門性を取り入れながらプログラムを共に開発すること。 2点目は、盲学校・芸術大学等の専門機関と協働関係を築き、美術館を核とした有機的なネットワークを形成し、共に課題の解決にあたっていくことである。
事業概要
本事業では、作家や専門家(Artist:[A])、視覚障害者(Blind:[B])、美術館学芸員(Curator:[C])の三者協働による「ABCモデル」を構築し、以下の取り組みを行った。
1.障害のある当事者が講師となる「ワークショップ」の実施
過去事業で制作した、工芸作家・河井寬次郎に関する鑑賞プログラムをもとに、京都府立盲学校にて出張ワークショップを実施した。また聴覚障害のある人が講師を務める作品鑑賞会を実施した。
2.所蔵作品の魅力をひもとく「ツールボックス」の開発
立体作品や平面作品をさわる・対話することで魅力を味わう「鑑賞ツールボックス」の開発に向け、清水九兵衛をテーマにしたプレワークショップを行った。
3.鑑賞教材としての「さわる図」の発行と活用
視覚障害者が、作品の特徴や魅力を指先でふれて学ぶことができる「さわる図」の制作に向け、視覚障害者、デザイナー、美術館が協働して、検討会議、サンプル制作と当事者による検証を行った。また「さわる図」の活用促進をねらい、視覚障害者を対象にした鑑賞ワークショップを実施した。また、フォーラム(研究会)を開催し、全国の美術館関係者と共に「さわる図」や「視覚だけに依らない鑑賞」の実践事例を共有し、議論する場を設けた。
実施項目・実施体系
1 障害のある当事者が講師となる「ワークショップ」開発
(1)ワークショップ検討会議
(2)ワークショップ実施
2 所蔵作品の魅力をひもとく「ツールボックス」の開発
(1)ツールボックス検討会議
(2)ツールボックス事例調査
(3)プレワークショップ
3 鑑賞教材としての「さわる図」の発行と活用
(1)「さわる図」検討会議
(2)「さわる図」事例調査
(3)フォーラム(研究会)の開催
実施後の成果・効果等
本事業では、障害の有無にかかわらず誰もが「さわる」「きく」「対話する」などの身体感覚を用いて美術作品にアクセスする鑑賞プログラム(ワークショップや鑑賞ツール)の開発に向けて活動を行った。
第一に、過去事業で開発した河井寬次郎をテーマにした鑑賞プログラムに基づいて、京都府立盲学校への出張ワークショップ(鑑賞+制作)を実施した(1(1))。視覚障害のある高校生12 名が参加し、普段は控えめな生徒が積極的に活動に参加するなど、美術の世界に触れることによって豊かな創造力・表現力を身につけるきっかけとすることができた。
第二に、所蔵作品の魅力を味わう「ツールボックス」の開発に向けたプレワークショップとして、清水九兵衛の作品を手でふれて対話して鑑賞する活動を実施した(2(3))。26 名が参加し、うち12 名が視覚障害者であった。身体感覚や対話を取り入れることで、障害のある方・ない方が共に作品を味わう機会を作ることができた。
第三に、「さわる図」の発行を目指した検討会議、サンプル製作、当事者による検証を行った。また「さわる図」を視覚障害当事者のより積極的な活用を目指し、「さわる図」を用いた鑑賞プログラムを開発し、京都・奈良の2カ所でアウトリーチ活動として実施した(3(1)(2))。
さらに、成果公開と課題の洗い出しを目的としたフォーラム(研究会)を開催し、全国の美術館関係者(20 名ほど)と「さわる図」の制作事例を共有し、課題や展望を議論した。