地域課題対応支援事業
年度絞り込み
事業区分で絞り込み
No.3 四感でこけしを感じる学習環境構築に向けたこけし文化のデジタル化事業
実行委員会
蔵王町伝統産業会館 (みやぎ蔵王こけし館)
中核館
蔵王町伝統産業会館 (みやぎ蔵王こけし館)
事業目的
地域問題解決として:
a工人の技術と知識の伝承
工人毎に異なるこけしの製作技法。それを後世にその技法が伝えられる手段を確立していく。
b地域資源の体験価値の向上
地域の中心である遠刈田温泉の顧客にとって、地域の文化の体験、コト消費の中心となり得るような働きかけをおこない、地域資源である温泉の体験価値を向上させる。
c遠刈田こけしブランドの価値向上
遠刈田こけしのポジショニングを再設定する。新たな、そしてより大きなカテゴリーをつくり出すことで、新たな顧客のニーズを獲得していく。
博物館マネジメントとして:
a新たな知の共有
遠刈田こけしや伝統産業に関する知識の共有
遠刈田のこけしや伝統産業に関する知識のスタンダードを、館の展示やネット上の情報として提供できることを目指していく。そのためには、必要に応じて情報提供手段のデジタライゼイションを図っていく。
bシビック・プライドの涵養
コミュニティの参画を仰ぎながら、主に小学校をフィールドとしてこどもたちのシビック・プライドの涵養を図っていく。
cコミュニティの参加
「コミュニティの参加(市民の参加)とともに博物館は活動し、教育、愉しみ、省察と知識共有のための様々な経験を提供する」とするICOMプラハ大会で採択された博物館の定義の実現、特にコミュニティの参加を図っていく。
事業概要
本事業は、次の事業によって構成される。/①地域のこけし組合と連携し、学芸員相当の専門家とともにこけしに係る文化、芸術や技術等を整理し、「こけし」のデジタル化(画像化・映像化)を行い、アーカイヴ化する素材の収集に取り組んだ。/②大学ゼミの協力のもと、こけし及びこけし館展示の課題洗い出しを行い展示の改善に取り組んだ。若者視点から提案いただいた課題をもとにして、デジタル化された素材を活用し、新たな展示企画としてこけし紹介動画を制作すると共に、こけしを紹介したこけしの本の制作し誘客に繋げ、来館者とコミュニケーションできる環境の構築に取り組んだ。/③こけし産地である地元の小学校と協働し、次年度の学校教育カリキュラムを構築して新たなこけし体験プログラムを造成した。
特に、重点的に取り組んだ項目は以下のとおり。
地域問題解決として:
a工人の技術と知識の伝承
工人毎にことなるこけしの技法。それを、「技法を伝える」ことを目的とする映像を作成し、それを工人のタグをつけアーカイブ化していく。
b地域資源の体験価値の向上
地域の重要な産業である遠刈田温泉の体験価値をより深いものにするために、コト消費、地域の文化を体験する機会としてこけしを位置づける。そして、宿泊客とのタッチポイントを考慮し、紙媒体を用いて知的好奇心を刺激する。
c遠刈田こけしのブランド価値の向上、リポジショニング
遠刈田こけしのリポジショニングをおこない、「普段の生活の中に融け込むこけ し」という新たな、そしてより大きなカテゴリーをつくり出すことで、より多くの、新しい顧客のニーズを獲得していく。
博物館マネジメントとして
d遠刈田こけしや伝統産業に関する新たな知識の共有
こけし工人と連携し、こけしや伝統産業の知識のスタンダードを、タッチポイントを考慮しながら、最適な手段を用いて正しいものを伝達していく。求める顧客の知的好奇心を満たすことを目的として。そして示された、「いつでも」「どこでも」「何度でも」を少しでも現できるようにしていく。
eシビック・プライドの涵養
いちばん結びつきが強い遠刈田小学校と連携し、教育のカリキュラムに「伝統産業」「地域の文化」「遠刈田こけし」を組み込んでもらい、小学生に正しく伝えていく。
実施項目・実施体系
【取組1】こけしに係るデジタル化
(1) デジタル検討会を開催
(2) こけし紹介動画を制作
(3) こけしの本を制作
【取組2】博物館相当施設を見据えた展示改革
(1) 展示改革検討会を開催
(2) こけし及びこけし館の課題を洗い出し
【取組3】体験プログラム検討
(1) 体験プログラム (教育プログラム構築) 検討会を開催
(2) 地元の小学校における体験プログラムを構築
【取組4】活動全体の振返り
(1) 評議会を開催
実施後の成果・効果等
〔 事業全体での成果・効果 〕
a.現状の課題の正確な把握、そしてその解決に向けたコンセプトとソリューション
これまで目を背けてきた遠刈田系こけしとこけし館の現状について、キチンと直視したことで現状の問題点を抽出し、課題を設定することができた。そのことにより、課題解決に向けたコンセプトとソリューションを設定することができた。更には、連携し、協業関係を結ぶべき相手方の目途も付き、リコンストラクションに向けた道筋を定めることができた。
b.最初の1歩
確実に最初の1歩を踏み出すことができたことで、事業に係わった人々のあいだに、実施と完遂に向けたモチベーションを高めることができた。それにより、次年度以降のより効果的な事業実施に向けた機運の高まりをつくり出すことができた。
c.強い手応え
事業のアウトプットが出揃い始めたのが2月に入ってからであり、人の目に触れる機会が少ないので大きな反応には結びついていない。しかし、3月に実施された伝統工芸フェアで配布した「こけし本」については、会場に集まった「ものづくりに高い関心を示す人」からは、好評を博していた。
〔 取り組み毎の成果・効果 〕
【取組1】こけしに係るデジタル化
動画視聴回数:322回(23/ 3/31現在)
こけし素材のデジタル化の過程で収集した素材を活用したこけし紹介動画を作成し、遠刈田系こけしと動画を紹介したこけしの本からこけしに興味を持つ方が増えて、こけし館への来館者数の増加に繋がる。
【取組2】博物館相当施設を見据えた展示改革
来館者数:642名(22/3)→1,056名(23/3) 1.6倍↑
上述の取組により、「動画」と言う展示素材を得たことで、これまで静的だった展示に動的なアクセントを入れる事が可能となり、これまで以上に「遠刈田こけし」のステートメントを分かり易く伝えることが可能となった。また、こけし館への導入として制作した冊子は、配布先の旅館をはじめ各方面から「こけし館に行ってみたい!」等の声も聞かれ、こけしそのものへの興味を広げるツールとして役立った。
【取組3】体験プログラム検討
小学校との教育プログラム計画:1本
体験プログラムの構築に当たっては、地域小学校とこれまでのカリキュラムの不足点や、問題点なども相互に会話しながら組立を行っていった為、次年度実施以降も、これまで以上に学校との密接な関係性の積み上げにも貢献した。体験プログラム以外でのプロジェクトやアクションへも繋がっていく可能性も本事業をきっかけに広がっている。
【取組4】活動全体の振返り
各取組前後で実施していった評議会では、様々な視点での意見が飛び交い、現状やこれからのアクションについて、相互にリテラシーを高めながら判断を行っていくことに役立っていた。それらはノウハウとして確実に蓄積され、次年度以降の博物館としてのロードマップを明確に描くことが出来た。