令和6年度 地域課題対応支援事業

No.3 都市における多様な地域文化資源を活用した包摂的コミュニティ形成の実践とアーカイヴ構築事業

No.3 都市における多様な地域文化資源を活用した包摂的コミュニティ形成の実践とアーカイヴ構築事業)

実行委員会

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」プロジェクト実行委員会

中核館

慶應義塾大学アート・センター

事業目的

① 多様な地域文化資源を活用し、様々なコミュニティと連携して文化プログラムを実践することにより、世代、デジタル・リテラシー、障がい、ライフステージ、価値観などが様々に異なるコミュニティの分断の拡大を防ぎ、「包摂する社会」の実現に寄与する
② 伝統文化から現代文化まで、多様な文化資源を対象とする地域の活動を可視化し、その担い手と活動をつなぐコミュニティを形成する
③ 文化の継承と時代に即した更新、社会への再接続を担うミュージアムの機能を強化するモデルを提示する

事業概要

1. 包摂的な文化体験の創出
世代、デジタル・リテラシー、障がい、ライフステージ、価値観などが様々に異なるコミュニティのメンバーが地域文化資源を活用した文化体験にともに参加し、体験を共有することを通じて、コミュニティのゆるやかな接続を図るプログラムを実施する。また、そのような文化体験を可能にするための手法やコンテンツについて、検討と制作を行う。

2. 地域の文化資源を可視化し、相互につなぐラーニング・ワークショップの開催
様々な領域の地域文化資源を可視化し、その活動や担い手をつなぐ横断的プログラムを実施する。本企画の特徴は、異なる領域に属する文化資源を組み合わせたラーニング・ワークショップとして実施することにある。大学に蓄積された学びのノウハウを活用することによって、ワークショップの準備や実施の過程において、活動や担い手の交流を生み出すとともに、異なる世代の異なる関心をもつ参加者が出会い、多様な価値観を受け入れる機会を創出する。

3. プロジェクトの運営、連携拡大とモデルの共有
プロジェクトの円滑な運営を進めるとともに、港区内で活動する企業/私立の文化機関とのコミュニケーションを行い、連携を拡大する。また、プロジェクトの活動アーカイヴを整理・公開し、他地域のミュージアムへの実践共有を行うことなどを通じて、事業の成果をモデルとして共有するとともに、プロジェクトの評価を行う。

実施項目・実施体系

1. 包摂的な文化体験の創出
1-1 多様な文化機関におけるインクルーシヴ実践 ワーキング・グループ [1-1 インクルWG]
1-2 食の歴史・文化を体験するインクルーシヴ・ワークショップ [1-2 インクルWS]

2. 地域の文化資源を可視化し、相互につなぐラーニング・ワークショップの開催
2-1 ラーニング・ワークショップ「個人メディア時代の放送と技術」 [2-1 放送WS]
2-2 ラーニング・ワークショップ「いけばなを残す・現代美術を残す」 [2-2 いけばな庭園WS]
2-3 ラーニング・ワークショップ「地域の寺院を訪ねる:寺院と現代建築」 [2-3 寺院WS]
2-4 明治から現代まで:学校建築公開日[2-4 建築公開]

3. プロジェクトの運営、連携拡大とモデルの共有
3-1 モデル共有化のためのアーカイヴ構築および公開 [3-1 アーカイヴ]
3-2 活動評価のためのワーキング・グループ [3-2 評価WG]
3-3 プロジェクト全体会議 [3-3 運営]

実施後の成果・効果等

本事業では、「1 包摂的な文化体験の創出」「2. 地域の文化資源を可視化し、相互につなぐラーニング・ワークショップの開催」「3. プロジェクトの運営、連携拡大とモデルの共有」の3サブ・プロジェクトの元に活動を行った。

1. 包摂的な文化体験の創出
世代、デジタル・リテラシー、障がい、ライフステージ、価値観などが様々に異なるコミュニティのメンバーが地域文化資源を活用した文化体験にともに参加し、体験を共有することを通じて、コミュニティのゆるやかな接続を図るプログラムを1種実施した。また、そのような文化体験を可能にするための手法について、ワーキング・グループを1回開催し、検討を行った。
多様な文化機関におけるインクルーシヴ実践ワーキング・グループ」(1回、参加者9名)では
目の見えない方、目の見えない方とともに活動している実践者、自治体の文化担当者、ミュージアム関係者が集い、昨年度までに実施したプログラムを踏まえ、文化機関をよりインクルーシヴな場としていくための対応事例を共有し、多面的アプローチの可能性について話し合った。これらの検討を踏まえ、「食」にまつわる多様な語り合いを通じて、障がいのある/なしや、年齢差などの垣根を超えて「共に生きる」ことを身近な「食」を通して考えていく「インクルーシヴ・プログラム『きょうの料理』でめぐる 100 年!ツアー」(1回、参加者7名)を公開プログラムとして実施した。また、活動のプロセスを参照可能な映像記録(2件)として残すとともにワーキング・グループでの検討や、公開プログラム実施で得た知見を、ケース資料(1種)として編集した。

2. 地域の文化資源を可視化し、相互につなぐラーニング・ワークショップの開催
様々な領域の地域文化資源を可視化し、その活動や担い手をつなぐラーニング・ワークショップを4種5回開催した。 「『放送博物館」で考える —— アナログ技術のこれまで・これから」(参加者18名)では、放送とそれが担っていた文化をどのように継承していくのか、そして個人メディアが全盛を迎える現代において、放送文化がどのように継承され、新たな記録媒体と接触しながら更新されていくのか、デジタル化の重要性を再確認しつつ、アナログな「もの」の価値や重要性を改めて考えた。「庭と現代美術:出来事を捕獲すること」(参加者22名)では、現代美術と庭園という異なる領域を照応させることによって、現代の芸術を継承するための方法について考えた。 「妙定院のシティ・スケープ:都市の定点観測者としての寺院」(参加者26名)では、都市の寺院を、都市が蓄積する歴史的・文化的地層を見通す窓として、また過去から現在へと繋がる都市の物語の証言者として捉え、寺院の視点から江戸から現在までの都市の景観(シティ・スケープ)を探訪することをねらいとした。これらのラーニング・ワークショップの内容は、映像記録(3種)として保存している。
通常非公開の地域の建築を広く公開する「建築公開日(建築プロムナード)」(参加者436名)では、慶應義塾大学三田キャンパスの建築物公開を行うとともに、ガイドツアーを実施した。「建築公開ヒアリング」(参加者5名)では、専門家を招き、建築物の公開において、ツアーなどのような手法だけでなく、より教育的な手法を導入することについて検討を行った。

3. プロジェクトの運営、連携拡大とモデルの共有
全体会(1回)の開催や、メールベースでのコミュニケーションを通じて、プロジェクトの円滑な運営を進めた。これまでのプロジェクトの活動記録を整理し目録(1件)にまとめたほか、一部公開可能な成果物について、プロジェクトの独立したウェブサイト(1件)を準備し、分かりやすく提示することを試みた。また、プロジェクトで実施可能な評価方法について、ワーキング・グループ(2回)を開催し、評価の目的や活用方法について議論を行い、そのサマリーを作成した(1件)。また、本年度のプロジェクトの活動をまとめた全体報告書(1件)を作成した。

事業実績(PDF)

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