令和6年度 地域課題対応支援事業
No.7 共創で紡ぐ、桑都・八王子の歴史文化継承と博物館機能強化事業
実行委員会
八王子市郷土資料館
中核館
八王子市郷土資料館
事業目的
介護サービスだけでは問題解決が図りにくい高齢者等に対し、はちはくの資源を活かし、多世代・多様な人との交流を通じて心身の活性化、社会参加を促す。またはちはくがハブとなり、「地域包括支援センター(以下「地域包括」)」×「高齢者」×「大学」×「他の市民団体や博物館」等を結び付け、「居場所」の1つとしてもらうことで、地域コミュニティの活性化や課題解決を図り、社会包摂や多世代交流により新たな文化の共創に貢献することで博物館のプレゼンス向上を目指す。
事業概要
・月1回程度、高齢者を主たる対象に郷土の歴史文化を題材としたワークショップをはちはくや地域包括で開催。またワークショップの周知を地域包括にも手伝ってもらうことで、普段博物館に訪れない高齢者にも訴求を行う。ワークショップの内容もはちはく側の提案だけではなく、地域包括からの提案や要望を柔軟に受け入れることで、従来にない視点を取り入れると共に、より多くの市民に親しまれる内容へ都度ブラッシュアップする。
・回想法等のワークショップ開催や質の高い地域連携を目指すため、市職員、学芸員及び地域包括職員等に向け研修や講演会を実施。その後も博物館資料の積極的な活用や事業を通して出来た新たな団体との関係性強化に努める。
実施項目・実施体系
【取組1】地域包括と連携した高齢者の「はちはく」への誘引事業
1-1 地域包括と連携した高齢者の「はちはく」への誘引事業
・イベント等のチラシの配布
・地域包括から高齢者への博物館の展示や開催イベントの呼びかけ
・包括での出張展示と博物館への誘因
【取組2】はちはく「集いの拠点化」事業
2-1 郷土の歴史文化継承及び認知症患者を含む高齢者の社会参加促進事業
・お手玉の会によるお手玉イベントの開催
・養蚕農家による「ご高齢の方も楽しめるはちはくイベント」の開催
・大学生と連携したローカルマガジン「ミコタマ」の作成
・親しみやすい媒体で歴史文化に触れるコンテンツ製作(まんが「まんがで読む八王子空襲」、紙芝居「鑓水商人と絹の道」の製作)
2-2 回想法体験及び未来の回想法サポータ発掘事業
・はちはく懐かし談話会(回想法)の実施
・NPOや包括への民具貸出
2-3 地域包括の社会資源や取組を活用したはちはくとの連携事業
・白地図ワークショップ
・投影模型を使ったワークショップ
【取組3】講演、研修を通じた先進事例や取組の市内、三多摩への波及事業
3-1 博物館関連講演(開かれた博物館を目指して)
・講演会「これからの博物館と地域連携」開催
3-2 回想法についての研修
・市民や包括職員を対象とした回想法研修実施
3-3 先進事例視察を通した地域包括職員の育成と連携強化
・昭和日常博物館(北名古屋市)及び美濃加茂市民ミュージアム視察
実施後の成果・効果等
1.博物館を通じたQOLの向上と新たなファン層の獲得
・新たな来館者層への訴求と波及効果
各イベントの地域包括経由の参加者数は数名と少ないものの、参加者による聞き取りやアンケートから、口コミを介して博物館の認知度が確実に向上していることが伺えた。学校等を経由すれば一定の周知が見込める児童や学生とは違い、友人関係や通院通所仲間、クラブ活動等、高齢者の所属するコミュニティは多様であることも地域包括とのやり取りにより判明。今後幅広く高齢者層への周知を図るためには、時間はかかるが費用対効果を考え、地域包括を発信源として口コミで博物館の活動を広げていくのが有効と思われる。また市内地域包括から更なる協力を得ることも出来れば、来館者の漸増が期待できる。
・博物館活動への興味惹起
はちはくへ訪れることで、展示や他のワークショップにも目が向くようになり来館者の興味関心を高めることが出来た。今回は展示等への誘導が弱かったが、ワークショップの内容に関連した展示を積極的に紹介する等、工夫を行っていく。博物館にあまり来ない層も、養蚕農家や回想法のワークショップに興味を示していただき、自身の町や生活に関連した卑近な内容をきっかけに、来館の動機を作っていくことが大事と言える。
2.博物館活動の多様化
・文化資源の更なる活用
昭和時代の民具や写真等の博物館資料の貸出や、歴史文化に関係するイベント開催等の協議も可能であることが連携団体と共有出来、更なる連携についての話し合いが進んだ。また関係団体と話しをする中で当初は「敷居が高い」「博物館は静かな場所」「連携にあまり乗り気でない場所」という意見もあり、日々のコミュニケーションや研修等を通じて「博物館の役割」や「保有する文化資源で何をどこまで出来るのか」を発信していくことが重要と言える。
・活動の幅の増加
当該事業を通じて、地域包括やNPO等から、ワークショップの共同開催の打診があった。これまで博物館が行ってきたワークショップとは毛色の異なる内容であり、新たな視点、発想が博物館に持ち込まれた。今後はこうした活動を体系化し、博物館が持つ文化資源を市民との共創を促すツールとして活用することが重要と考える。また今回の連携先である福祉関連の機関は業務量に比して人員が少ない傾向にあり、当初連携に消極的・懐疑的な考えを示す場合もあった。そのため連携前に「互いの役割の明確化」「双方にメリットがある連携」「博物館のミッション(地域社会の文化資源の保存継承等)」を話し合うことで、連携疲れが起きない工夫も継続的な活動の観点から重要と言える。
3.地域の関係団体への博物館の機能周知と関係性強化
地域包括との連携強化により、地域課題に対する新たなアプローチが生まれた。博物館が単なる文化施設ではなく、地域の住民福祉や健康増進を支える拠点の1つとして積極的に参画する姿勢と博物館が求められる役割を改めて内外に示した点は、非常に大きな成果と言える。周知の結果、活動への理解も得られ、より効果の高い連携につなぐことが出来た。具体的には、市の福祉関係部署の協力を得て、イベントのチラシ配布が5から21の地域包括で可能となったことや、地域包括やNPO団体から個別にワークショップや協力の依頼があったこと等があげられる。今後はこの関係性を維持しつつ、更に博物館の発展に向けて尽力していきたい。